「その名に恥じぬ走りを！」

確かに、未だG1で誇れる実績はない。
かろうじてホープフルSで5着しているが、あれもコントレイルにハッキリと水をあけられてのもの。
2歳の頃と昔の話でもあり、どのみち通用の根拠とするには、いささか無理があろう。
だが、ようやくハッキリとしてきた適性面を拠り所とするならば、ここでも十分に戦える算段は成り立つ。

単純にサウスポーなのではないだろうか。
妙にスムーズに立ち回れる左回りと何やら道中でバタつく右回り。
元々、口向きの悪さを課題とされてきた馬でもある。
これがレースのレベルが上がった時ほど露骨に表面化してパフォーマンスに影響を与えていたのだとしたら…

それだと全ての戦績に納得がいくのである。
なぜG2に限ると無敵の存在だったのか。
それこそ直接とはいかなくとも間接的な比較であれば、むしろ有馬記念に天皇賞春の結果の方が不自然なぐらいに負けすぎなのだ。
G2の3勝全てが左回りに対して、G1での結果は全て右回りばかり…
これが答えなのではないか。

その上で今回は究極に仕上げてもある。
今思えば、前走というのは意図的に8分でとどめていたのだろう。
一叩きしての今回にピークを持ってくるために。
思惑通り、馬体は締まり直前には怖いぐらいの集中した姿。
これを当日に日本No.1のジョッキーが操るとくれば、期待するなというのが酷というもの。

舞台に状態、状況とそれこそ揃えられるモノは全て揃えての出走。
「名は体を表す」のか、それとも「名前負け」か。
オーソリティ（権威者、専門の道に通じて実力を持つ者）の真価が問われる。