競馬は時計じゃない、けど

昨年小倉のＣＢＣ賞を１２００ｍのＪＲＡレコードとなる１分６秒０で勝ったファストフォースは、その後の勝ち鞍がなく、先の高松宮記念でも９着に終わっている。そういう例を持ち出すまでもなく、異なる環境での時計比較がどれだけナンセンスなものかは、競馬ファンの皆さんもご存知であろう。まして洋芝で行なわれる函館スプリントＳで、時計の優秀さを説いたところで、絵に描いた餅ではないか。

しかしながら、ヴェントヴォーチェの前走、中山での１分６秒８という時計は、ちょっとスルーできない優秀さだ。コースレコードにコンマ１秒差まで迫る時計だったが、そのレコードは１０年前のスプリンターズＳでロードカナロアがマークしたものであり、野芝のみの状態で施行される一年で最も速い時計が出る時季でのもの。洋芝との混合で試行される４月の開催でコンマ１秒差まで迫ったのなら、実質はレコードを塗り替えたと言っていい快挙ではないだろうか。１２００ｍ戦で２着に３馬身差というのも、重賞でやオープンでは滅多に見られない着差であり、掛け値なしに強い内容だった。これは、ファストフォースのようにはならない器と見る。