“一瞬やったかと思った”

◎はローザノワール。

何を置いても前走のヴィクトリアマイルは、レース後の“一瞬やったかと思った”という鞍上コメント通りの快走であった。おそらく、直線を向いて追い出した時点でも、それだけの手応えが残っていたのだろう。２番手から並びかけられた３着馬レシステンシアとの着差は僅かにハナ差であり、凌いだ相手の中にはソングライン、デアリングタクトという錚々たるメンバーが含まれていたのだから、ＧIホースと互角以上に渡り合った走りを素直に評価すべきだ。ただ、常に上位争いを演じることができないのも逃げ馬の宿命。それなりの条件が揃っていなければならないし、けっして何かに恵まれたわけではない前走の好走をもってしても、ＧIIIだったら楽に逃げ切れるというわけではない。

函館で行なわれた昨年のこのレースでは、逃げて６着という結果に終わったが、直前にダートのマリーンＳを使っての臨戦で陣営にそこまで色気があっての参戦ではなかったはずだ。そういう意味でも、同じ洋芝の札幌で行なわれる今回、一年前のレースが何かを測る材料にはなるまい。そもそも、小回りの１８００ｍは３走前の中山で鮮やかな逃げ切り勝ちを演じたように、この馬にとって、東京マイルよりもはるかに持ち味を発揮しやすい舞台ではないか。絡んで来そうな強力な同型馬は不在で、苦もなくハナに行ける内枠も引いたのであれば、鞍上の思うがままのレースができるはずだ。