春秋的中を目指して

手前味噌になるが、春の高松宮記念は◎ナラングレグで快哉を叫んだ一戦。その恩もあってナランフレグには肩入れしたくなるのだが、内枠を引いて腹を括った鞍上の神懸り的は騎乗は、正直言って当方も想定外だったものであり、あのようなドンピシャの競馬は同じ馬と同じ騎手がそう何度もできることではない。まして、心情と馬券は分けて考えるべきであり、相手の一頭にとどめた次第だ。

このスプリンターズＳは、もちろんサマースプリントシリーズの延長線上に置かれているわけだが、決定的に違うのはコースの問題。たとえ野芝での開催であっても、フラットなコースで行なわれるサマーシリーズにはない急坂がゴール前で待ち受けている。スピードが必要なことはもちろんではあるが、それ以上に急坂を物ともしないパワーが要求されるのだ。セントウルＳの舞台である中京の直線にも坂があるが、それは４コーナーを回ってから残り１ハロンの手前までであり、坂で勢いが削がれたとしても上がり切ってからのもうひと伸びが利くコース。対して坂を上り切ってから７０ｍ先にゴールとなる中山は、坂で勢いが削がれた馬は万事休すとなるわけだ。

◎はウインマーベルとした。中山に実績がある馬ならまだしも、初コースの馬にそんな期待をかけていいのかと思われるかもしれないが、父はパワーに長けたアイルハヴアナザー、母も中山で３勝を挙げているのなら、むしろこのコースでこそと言えるのではないだろうか。キーンランドＣでは２着に敗れたとはいえ、初の古馬相手でも臆することのない正攻法で勝ちに行ったものであり、最後は勝ち馬に内をスクわれた形となったが、あの競馬を中山で演じていればパワーで押し切れたのではないかと思う。何よりサマーシリーズを１戦、というのは休み明けや２、３戦使ってきた馬と比べても理想的な臨戦過程であり、この馬で是非とも春秋的中を狙ってみたい。