一長に秀でる

一長一短とは正にこのことか。実績に勝る２冠牝馬は骨折休養明け、トライアル快勝のアートハウスは今の所は高速上がりの軽いレースでしか結果を出しておらず、スタニングローズも基本的には立ち回り勝負のタイプ。馬体増には好感を覚えつつも、簡単に勝った紫苑Sからはそこまでのインパクトは受けない。年始の段階から言ってきたことだが、今年の３歳牝馬路線には有無も言わせぬ実力馬は不在である。勝ち切れぬ１勝馬が２冠を取るまでに至ったのは、自身の実力以上に、そもそも主役がいない背景が影響していることは言うまでもない事実だ。

内回りの２０００ｍという舞台は３冠で最も難しいローケーション。阪神に替っているとはいえ、広々としたコースで競う桜花賞やオークスと比べれば明らかに紛れが生じやすい舞台である。上位馬が信頼に値しないと考える以上、アッと驚く結末を描くのも穴党の性というものだ。

◎メモリーレゾンはローズＳ５着というインパクトに欠ける臨戦だが、トライアルという性質上か、道中の位置取りや仕掛けのタイミングなど、少し余所行きの立ち回りが目についた。要は権利を第一に脚を余さぬ運行。結果的にはこれが自身の良さを封殺することになり本来の決め手が発揮できなかった。何せ、そこまでの５戦中４戦で最速上がりをマークしているキレ者。道中は『溜め』が基本であり、小脚を使わせて良いタイプではないのだ。取りに行って取れなかった権利も、ある意味では必然であり、そもそも走り慣れない左回りだったことも加味すれば、着順だけで過度に割り引く必要もないだろう。

抽選突破で出走が叶い、今度は自身の良さを信じて乗れる番だろうし、右回りに替る点も大いに魅力であり、前走以前の抜群の決め手に期待してみる手はまだ残されている。積み重ねた戦歴が頼れないなら、混戦を断つのは、きっとこういう一長に秀でたキャラクターであろう。