本番仕様

私は頭の固い古い考えの人間。皐月賞馬やダービー1、2着馬が無事に夏を越しながら菊花賞に目もくれないのには未だに違和感を覚えてしまう昭和脳だ。まぁ頭では理解しているので憤ることはないが、『3冠』というものの価値が昔と比べて色褪せているのは間違いなく、『強い馬が勝つ』菊花賞は数年にしか訪れないのも明らかだろう。

今年はどの馬が勝っても暫定王者であり、余程の勝ち方でもしない限り、世間の票は菊花賞馬に流れないだろうが、票が１票でも増えるようなアツい競馬になればと願う。

◎ヴェローナシチーはレコード決着の京都新聞杯でハイペースを自ら負かしに行った２着が強い内容で漁夫の利を得たアスクワイルドモアより内容は上と評価している。賞金面からダービー出走が叶わず出走した白百合Sは７頭立てのヨーイドンの競馬。最後は地力で押し上げたが、そもそもレースのカラーが自身のストロングポイントと逆であるならば取りこぼしも致し方なく、勝ち馬フェーングロッテンが古馬相手に一応の成果を挙げている点は負けても価値を高められる点だろう。初めて３着内を外した神戸新聞杯には少し物足りなさも覚えるが、久々のせいか見るからに反応が鈍く、勝負所では前後左右に馬がいて思い切りよく踏み込めなかった節がある。最後に詰めた脚に及第点を与えつつ、評価を下げる必要はないと見立てた。

知っておいて損はないことだが、この馬は調教で凄く動く馬で、陣営もそう手加減せず速い時計を出してくる。それが今回の１週前はCW６８秒０の地味な時計に留めた。これはデビュー以来の１週前追い切りで最も遅い数字なので、そこだけ見ると疑問符も浮かんでくるが、よくよく精査すると、終い追って叩き出した１F１１秒２もまたデビュー以来で最速のラップだったりする。やれば出る馬が、あえてやらずにコントロールされた追い切りであり、総合すると、３０００ｍという未知の条件を走ることを想定した非常にメリハリのついた良い追い切りだったと評価している。そして直前は５１秒６の自己ベストと、阪神の坂も意識できる坂路でシッカリ動かしてきたのも本番仕様の仕上げと言えるだろう。

阪神で行われる菊花賞は今年以降はしばらくないはずで、自身の持久力を活かせる舞台での覇権争いなら自然と評価は上がる。鞍上に川田騎手を拝してきたのは陣営に手応えがある何よりの表れだろうし、春の実績だけで上位評価できるレベルの組み合わせならば、期待が高まるのは当然だろう。