白の魔力

史上初となる牡牝同時に三冠馬が出現し、これまた史上初となる三冠馬が３頭揃い踏んだジャパンＣ。この秋の“史上初”にもうひとつ加わる可能性があるのが、白毛のＧI馬誕生だ。

ソダシの祖母はシラユキヒメ。父母ともに白毛ではないのに突然変異で生まれた白毛馬である。そこから、母のブチコを経て同馬にも白毛の遺伝子が受け継がれたわけだが、どうも白毛の遺伝のメカニズムは例も少ないためによくわからないらしい。というのも、確率的に父母の一方が白毛の場合、仔が白毛となるのは５０％なのだが、シラユキヒメやその仔の白毛馬たちはその確率を大きく上回って白毛馬を出現させているからだ。ただ、そういった遺伝学については全く素人の当方でもおぼろげながらにわかるのは、毛色とともに能力も確かに伝えているということだろう。

しかしながら、同じ３戦無敗で人気を分けるであろうメイケイエールは白くない。こちらは曾祖母がシラユキヒメで、祖母がアイドルホースとして名を馳せたユキチャン、母がシロインジャーと、ここまでは白毛だったのだが、鹿毛に出た。何か、こちらの方が突然変異っぽく見えてしまうが、毛色とともに能力を伝えているのであれば、矛盾するかのようである。

一頭の突然変異馬を祖とする白い馬と白くない馬。そのワンツー、なんて決着も大いにあるわけで、それはそれでロマンチックではあるが、そんな白の魔力に呑みこまれてはいけない。前々で運ぶソダシを、好位で見る形で運ぶメイケイエール。他にも行きそうな馬はいるが、ひょっとすると２頭が直線の入り口あたりで馬体を併せる可能性もあるだろう。思えば、昨年も４角先頭馬と２番手の馬とで着差こそあったもののワンツー決着だったわけだが、そのような例はこのレースにおいては“突然変異的”であり、圧倒的に直線強襲劇の多いレースなのだ。仮にどちらかが残っても、何かが突っ込んでくる。２頭のワンツーはありえないと判断した次第である。

◎はオパールムーンとした。前走のファンタジーＳで見せた脚は凄かった。あと１ハロン長ければ逆転できる、という机上の理論が当てはまらないのが競馬だが、そう感じさせるだけの脚であったことは確かだ。これまた末の破壊力が魅力的なサトノレイナスとともに、２頭まとめて呑み込むシーンすらあると信じている、