斜線上の怪物

ダービーの予想で何よりも重要なのが皐月賞の分析である。これは、けっして皐月賞組を重視すべき、という意味ではなく、そこでしっかりと各馬の能力を測った上で、東京の２４００ｍにおける足し算と引き算を行なう作業が必要だということだ。そして、その結果として、別路線組の台頭などを考えるべきだろう。

その皐月賞。エフフォーリアが２着に付けた３馬身という差は、かなり決定的と言えるもので、過去を遡れば、１１年のオルフェーヴルが同じ３馬身差で、その前はとなると９４年のナリタブライアンの３馬身半差。ともに三冠を達成したのだから、エフフォーリアもまたそのレベル、という見方もできる。ただ、今年の皐月賞は内有利・先行有利の特殊な馬場となった中で、エフフォーリアにとっては全てがうまく行った競馬ではなかったか。もちろん、あの若さで完璧に乗った鞍上を褒め称えたいが、ではあの着差が能力差なのかと言えば、疑問を挟みたくなる。

一方、２着以下のゴールは、７着までコンマ３秒という僅差だったが、３着馬が２着馬の内にいただけで、４着から７着までは内から外へキレイな斜線が引かれたかのようなゴールシーン。実際に、その並びは、４コーナーで回った内・中・外・大外のポジション通りであり、内有利の馬場を考えると、少なくとも２着から７着までは明確な力の差はないと思うのだ。

◎は、その斜線の一番外にいたディープモンスターとした。道中は後方の絶望的な位置取りで、４コーナーでも大外を回って勢いをつけて直線を向いたが、そこで前をカットされる微妙な不利もあった。それでいて、あの斜線上まで追い上げたのだから、相当な能力を示したと言えないだろうか。

例えエフフォーリアの３馬身が、先達と同じ道を歩むことができるものだったとしても、◎が２着に来てくれれば馬券になる。そして、前述した疑問の通り、そこまでの力差がなかったとしたら…。そう願わずにいられない。