可能性を信じて

経歴ウン十年のプロ予想家から、競馬歴は覚えたての数ヶ月というビギナーまで、共通する認識は“この中で一番強いのはグランアレグリア”である。かく言う私もそう思う。されど、一番強い馬が勝つとは限らないのが競馬であり、というか、その言葉を信じて競馬と戦っている身としては、とても◎を打つ気になれないが、もちろん打たない理由はそれだけではない。

スプリントからマイル、そして中距離と３つのカテゴリーでのＧI制覇を狙った前走の大阪杯は、特殊な馬場とペースに泣いたものであり、けっしてグランアレグリアの能力評価に瑕が付く内容ではない。ただ、前走が距離を意識させて折り合い重視の追い切りで臨んだのに対し、今回は通常モードの追い切り。距離に合わせた調教パターンと言えば好感が持てるのだが、馬の立場で考えてみるとどうなんだろうか。まして、初距離かつタフな道悪競馬の後に、いつもの走りを見せてください、と言われても、馬がその気になるかどうか。たとえ、名伯楽と名ジョッキーのコンビだとしても、１００ある能力をフルに発揮させるのは難しいのではないかと思うのだ。

では、何に◎を打つかだが、グランが８０か９０の力を発揮できた場合を想定するなら、ある程度、能力がハッキリ見えている馬ではまだ厳しい。二番目に強いはずのレシステンシアも大外枠を引いてしまっては、競馬プランの立て方自体も限られてくるだろう。

◎はテルツェット。まだ能力の底を見せていない馬だ。負けたのは３歳春、デビュー２戦目で休み明けのミモザ賞３着だけだが、そんな若駒当時のキャリアなど、ここでは無視していい。つまるところ、負けていない馬は強いの理論。グランアレグリアもそうではあるが、牡馬との戦いを続けてステップアップしてきた馬に、たとえＧIであっても、この舞台はそう重荷になるものではないし、まして初対決となるグランアレグリアとの勝負付けが済んでいない以上、可能性を信じるべきではないか。昨日の京王杯ＳＣを勝って調子に乗っている鞍上と、その馬券を取って調子に乗っている私とのタッグで、一発を狙ってみたい。